清水義也独立二十周年記念能解説
能「花月(かげつ)」その4
⑤弓之段
門前の者は、桜の木を見上げて言いました。
「あれ? 花に芽がある。芽かと思ってよく見たらウグイスだ! ・・・花月さん、あの桜の枝にウグイスが来て、花を散らしてますよ!」
花月も桜の木を見上げて
「本当だ!よし、この弓矢を使って射落としてやるぞ!」
「大長刀があればウグイスのあの細い脚をバッサリと斬ってやるところだが、私には敵がいないので刀の類は持たないし、この弓は的を射るか、もしくはあのような悪さをする小鳥を射る為に持っている。・・・中国にいた養由基という人は弓の名手で柳の葉を射たらすべて射抜き、百発百中だったらしい。私だって花の梢にいるウグイスを射て落とそうと勇んでいる気持ちは養由基に負けないぞ!」
そして、花月は履物を脱いで、袴の裾を引き上げ、花の陰からウグイスに向かって、弓を番えて、キリキリ!と引きます。
さあ、射るぞ!
と思った花月。
いや、待てよ、、、
仏さまは殺生をしてはいけないと仰られていたな、、、
花月は弓矢をその場に捨ててしまうのでした。
・・・弓矢を使った「殺生をしてはいけないよ!」という説法・・・
これが、弓之段です。
この能「花月」は、弓矢を捨てるまでが前半、と思っておかれるのが良いと思います。