聖なる劇
1つ前の記事で、能は神仏の教えを大切にする西洋の「讃美歌」「聖なる劇」に近いと書きました。
今回の9月7日の観世会定期能「芦刈」「隅田川」「一角仙人」のどこが「聖なる劇」なのか?
まず、日本の信仰が「やおよろずの神」であることを忘れてはいけない。
全知全能の神、一神ではない。
「芦刈」は和歌の神の功徳。
和歌の心によって、夫婦が再会する。
「(和歌は)鬼神を和らげ、武士の心慰むる、夫婦の情知ることも、今身の上にしられたり」
→和歌は、鬼や神、武士の気持ちすら和らげる効果がありますよ。
「隅田川」は離れ離れになった我が子に会いたかったのに、亡くなっていることを知った。
「母の弔ひ給はんをこそ、亡者も喜び給ふべけれ」
→嘆くことより、弔いの念仏が大事だと思うよ。
「一角仙人」は龍神を岩屋に封じ込めた仙人を退治する話。
→「弘法も筆の誤り」のような感じですね。神通力を使う仙人も、色仕掛けと酒には敵わなかった。万能なものなどない「欲」についての仏教的なたとえ話。
宗教劇なんです。