幽玄とは、、、
昨日、今日と官能小説を読むような能の地謡に出てきました。
主役は舞を舞うのですがね。
彼女たちから見えているのは、在りし日の恋人、愛人との大切な時間。
あの日も、その日も、この日も、、、
思い出は頭と身体の中を廻り、目前にその景色が広がっています。
でも、そのシーンには実際の様子も描かれず、舞い手本人(幽霊)の妄想なのです。
昨日は「野宮(ののみや)」
六条御息所の幽霊は、光源氏との熱い日々を回顧します。
それが「破之舞」という舞。
あの日は光源氏さんが私のところに来て一夜を過ごし、
その日は私が光源氏さんを尋ねにいき
この日は、、、
六条御息所の幽霊の目には、一瞬一瞬が写真のように見えていて、
そして、今回は「合掌留」という演出で、2分くらいの「破之舞」の最後に座って合掌をします。
これは、実は六条御息所の幽霊は舞を舞っていたのではなく、ずっと座って合掌していたのです。
合掌したままでは六条御息所の幽霊の妄想に見えないので、「破之舞」という形で表現します。
「破之舞」の間、演じている能楽師自身に光源氏が見えていたら、さぞ官能的な舞になるでしょうね。
でも、、、
型の通りにやれば能が出来上がりますから。そこが、能楽師それぞれの違いです。
能楽師は六条御息所の幽霊を演じ、その目を通して光源氏の姿を思い、燃え上がるような情念を見せる。
が、、、突然、鳥居の前に座り、扇を置いて合掌する。
演出を知って能を観ると、とんでもなく緻密に描かれていることがわかります。
そして今日は「松風」を謡いました。
目の前からいなくなった愛する男に強い情念を見せる、凄まじい能です。
これが「幽玄」の世界。
本当に能は面白い!
私の能講座をお聞き頂くと、能が目の前にリアルに展開されます!