教育界へ 〜能から何を学ぶか?
以前のブログにも書いたことがありますが、私は母校の関東学院高校への指導を、私なりの完成されたカリキュラムを組んで開催しています。
それは「能を学ぶ授業」ではなく、「能から何を学ぶか、の授業」です。
能って素晴らしいでしょ〜、こんな素敵なんだよ〜!、なんていうことを伝えるつもりは全くありません。
高校1年生対象の、年に3回しかない私の授業は、クラス毎に行います。
1回目は、歴史認識の修正。能とはなにか?を知る。日本という国の価値。すべてクイズで、挙手制または3択クイズ。
この回の最後に能面を見せて何年前に作られたものかのクイズ。表面だけを見ると300年くらい前に作られたようにも見えるその面は、実は20年くらい前に作られた新しい面。それは裏の焼き印を見ればわかる。
つまり、1回目は、
【知識だけ、見た目だけで物事を判断してはいけない】
という授業でした。
2回目の授業前半は、実際に謡で声を出す。ミッションは「デカい声を出す!」以上。謡の声なんて無い。キレイな声なんて要らない。とにかく大きな声を出す。その方法を教える。デカい声が出なければいつまでもやらされます。声を出すか出さないかは、指導している私の責任ではなく、出す側の生徒の責任であることを理解させる。
【協力すること、自己責任であることの認識】
という授業でした。
2回目の後半は能面の体験。能面の持ち方だけを教えて、あとは顔にあてたり、写真を撮ったり、自由にさせる。・・・その上で、能楽師が能面を使用する際の作法を教える。ふざけて楽しく顔にあてていた面を、うやうやしく一礼してから顔に。場の雰囲気が一瞬にして変わります。単なる木彫りの面でも、人によって扱い方や気持ちが変わる。
【価値観の違い】
という授業でした。
そして能装束に触れる授業。能楽鑑賞会の能「敦盛」で使用する装束を触ってみる。絹製品である「縫箔(ぬいはく)」は、柔らかく、まさに絹の風合い。次に「長絹(ちょうけん)」は硬くてゴワゴワ。この長絹は何の糸で作られているか?・・実はこれも絹。見た目ではわからない、触れてみてもわからない。
【物事の判断力】【上辺だけでわかったつもりになるな】
という授業。
2回目の核心は「君たちはあと2年で大人なんだ!」という危機感を持たせること。
大人の常識に無理やり押し込まれる生徒に、その怖さを少しでも認識してもらう。
3回目の前半は、謡を謡うこと2回目と同じ。
3回目の後半は、能面・能装束の体験。先着1名の挙手制。クラスで1名に「敦盛」の面・装束を着付ける。「重さは?」「これで身動き出来るか?」などの質問を。そして、太刀を抜かせる。他の生徒さんからは「俺もやりたい!」という声。でも、やらせません。
【チャンスは自分で掴め!】
という授業。
そして、最後に私が紋付袴の状態で仕舞「敦盛」を舞う。今、クラスの仲間が着ていた面・装束を着て、この動きをするのだ、ということを素描の状態で鑑賞。
【常に本気で生きろ!】
という授業。
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能ってステキだから、是非能をやって!なんて思いません。
本気でこの道に体当たりしてくる以外、能なんて無理だから。
だから世襲がいいのです。
本気の親の背中を日々見せられるから。
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能楽鑑賞会「敦盛」。
装束を着て生徒さんの前に立ち、説明をする私。
イスに腰掛けて、面に一礼し、顔にあてます。
まさに戦闘モード。
全力で能に立ち向かっていく囃子方、地謡。「デカい声を出せ!」と言われてやらされた謡を、能楽師が目の前で本気で謡います。
そこに平敦盛の幽霊が現れます。
2回目で自分が触れた装束、3回目でクラス代表が着た装束を私が身につけて舞っています。
素描で見せた所作を、面・装束をつけて演じています。
このリアルさは、授業を受けたからこそわかるものです。
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2年前から、これに狂言教室を加えました。
関東学院では中学1年生を対象にした狂言鑑賞会をやっていましたが、私が反対して、変えました。
中学1年に「笑い」を見せても教育にはならない!と。
対象は中学3年生に。
そして、最大の武器として、お笑いコンビ「やるせなす」の石井ちゃんこと石井康太さんに来て頂いています。
石井さんはお笑い芸人でありながら、狂言のプロの道に入られ、野村万蔵先生の門下として、狂言の舞台にも多数出演されています。
司会進行は私。
石井さんに、お笑い芸人と狂言方の楽屋の違い、挨拶の違いを見せて頂きます。
同じ「笑い」の世界でも、挨拶の仕方すら違う!ということを、中学3年生に教えます。
そして、狂言のワークショップをして頂きます。
狂言の「笑い」などの所作を体験。
野村万蔵家の若手の皆様に狂言2番を演じて頂きます。
「高校1年生は能を教えるからね」と言って、実は2学年にわたる授業であることを伝えて終わります。
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こんな、私の一連の授業。
実は、先生方が楽しみにして下さって。お時間がある先生は見に来られます。
【能から何を学ぶか?】
私の授業にご興味のある方は、見学も可能なので、どうぞご連絡下さい。
yoshinari.shimizu@gmail.com
10月後半から計3回の授業がスタートします。

