五流ノ会
先日、五流ノ会で共に活動している金春流・山井綱雄さんが会長を務める「能の心を未来に伝える会」にて、能『船弁慶』のシテを勤めさせて頂きました。
ご覧下さいました皆様、誠に有り難うございました。
今回は、笛を八反田智子さん、大鼓を柿原光博さん、太鼓を大川典良さんにお相手頂きました。
実は、このお三方と私たち「五流ノ会」には、共通点があります。
五流ノ会は、昭和47年・48年生まれの、観世・宝生・金春・金剛・喜多、五流の能楽師五人による集まりです。
そして今回お相手頂いた囃子方のお三方も、まさに同じ世代なのです。
若い頃は、先輩方の胸をお借りし、ただ一生懸命に能を勤めてきました。
舞台に出れば先輩がいる。
楽屋にも先輩がいる。
わからないことがあれば、先輩の姿を見る。
能について何かを語るよりも、まず舞台を勤める。
そんな中で育ってきたように思います。
ところが、いつの間にか後輩が増えました。
最近では、ふと楽屋を見渡すと、私たちの世代が最年長という舞台も少しずつ増えてきました。
何とも不思議な気持ちになります。
自分では、昨日まで先輩方の背中を追っていたような気がするのです。
しかし、時間は確実に流れています。
そして、能を取り巻く時代も大きく変わりました。
私たちより少し上の先輩方までは、「能について自ら語ること」を戒められていた時代があったと伺っています。
能楽師が自ら能を語り、宣伝とも取られるようなことをするべきではない。
良い舞台を勤めていれば、お客様は能楽堂へいらして下さる。
そうした美学が成り立つ時代だったのだと思います。
私たちの世代が社会に出た頃には、既にバブルは崩壊していました。
「良い時代」を知りません。
そして今、ただ待っていれば、多くの方が能楽堂へ足を運んで下さる時代でもありません。
ならば、どうするのか。
私は、私たち自身が能について語らなければならないと思っています。
能とは何なのか。
なぜ七百年もの間、続いてきたのか。
なぜ、今を生きる私たちが、この芸能を勤めているのか。
そして、この能を誰に渡すのか。
私たちの世代には、
「能の心を未来に伝える」
という、大きな役目があるのではないでしょうか。
重い責任です。
しかし同時に、それは私たちの世代に与えられた「生き甲斐」であり、「やり甲斐」でもあるように思います。
私は観世流の能楽師として生きてきました。
当然ながら、観世流の中で能を学び、観世流の先輩方の背中を見て育ってきました。
そんな私が「五流ノ会」を始め、宝生流、金春流、金剛流、喜多流の同世代の仲間たちと活動するようになりました。
そこで初めて知ったことがあります。
演出の違いだけではありません。
謡い方の違いだけでもありません。
それぞれが、それぞれの流儀を背負いながら、本気で能の未来を考えている。
仲間たちの「能への思い」を知ることが出来ました。
これは、私にとって生涯の財産です。
そして今、私には一つの夢があります。
「五流ノ会」を、全国47都道府県へ届けたい。
東京の能楽堂だけではなく、私たち五人が、その土地へ出掛ける。
配信の画面を通してではなく、目の前で謡い、舞い、そして能について語る。
「観世流ではこうする」
「宝生流では違う」
「金春流はこう考える」
「金剛流にはこんな演出がある」
「喜多流ではこう謡う」
五つの流儀が今も残っているからこそ出来ることがあります。
そして、五人が同じ時代に生まれ、同じ時代を生きている今だからこそ、出来ることがあると思っています。
皆様から頂く入場料を、私たちの次の活動への力に変えながら、一歩ずつ全国へ。
北海道でも。
東北でも。
北陸でも。
山陰でも。
四国でも。
九州でも。
まだ能をご覧になったことのない方の前へ、私たち自身が出掛けていく。
それが、私の次なる夢です。
7月16日㈭18時より、渋谷・セルリアンタワー能楽堂にて「五流ノ会」を開催致します。
今回取り上げるのは、能『八島(屋島)』。
「修羅物とは何なのか?」
そして同じ『八島』という一曲が、五つの流儀によって、どのように違うのか。
五流それぞれの演出を、実演を交えながら比較致します。
これまで五流ノ会では、配信も活動の目的の一つとして参りました。
しかし今回からは、生の舞台だけをお楽しみ頂きます。
全席自由席、3,500円。
残席も、あとわずかとなりました。
次回の五流ノ会は、来年2月です。
私たち五人が、これから何を未来へ渡していくのか。
是非、セルリアンタワー能楽堂でご覧頂けましたら幸いです。
皆様のお越しを、五人でお待ち申し上げております。
チケットは私のホームページからでも承ります。
